よしあきちゃん事件 ―― 白昼に消えた5歳児、身代金目的誘拐殺人の真相は
1987年9月14日午後、群馬県高崎市筑縄町。高崎中央消防署員・荻原光則さんの長男、荻原功明(よしあき)ちゃん(当時5歳)が、自宅前の神社から姿を消しました。
■ 最後の目撃と通報、そして脅迫電話
午後2時半、父親とともに幼稚園から帰宅した功明ちゃんは、「滑り台で遊んでくる」と言って神社へ。その10分後には姿が見えなくなっていました。
午後6時半、高崎署に捜索願を提出。直後の午後6時42分、「子どもを預かっている。2000万円よこせ」という電話が家に入ります。電話は4回にわたってかかり、3回目には功明ちゃん本人が登場しました。
功明ちゃん:「お父さん、元気。これから帰るよ」
光則さん:「どこにいるの?おうち?誰と一緒?」
功明ちゃん:「おまわりさんと一緒」
■ 発見された遺体と死因
9月16日午後6時35分、高崎市鼻高町の寺沢川・谷津橋下で功明ちゃんの遺体が発見されました。全裸でうつ伏せ、顎は複雑骨折。死因は砂と水の誤嚥による窒息死で、13m上の橋から生きたまま落とされたとされました。
胃の中は空で、食事を与えられていなかったことも判明。死亡推定は15日午前10時以前であり、犯人は殺害後も脅迫電話をかけていたと考えられます。
■ 散乱する遺留品
現場近くの斜面で「パーマン柄のサンダル」が発見され、数kmにわたって衣服が点々と捨てられていました。これは車で移動しながら投棄された可能性が高いです。
■ 犯人の電話と逆探知の疑問
すべての電話は公衆電話からで、通話中には車の音も。最も長かった通話(27秒)時には逆探知体制が解除されていたため、特定できませんでした。
■ 目撃情報
- 白いリフトバック車が神社入り口を塞ぐように停車
- 町屋橋や管状大橋下で「子どもを乗せた車」が目撃
- 運転手は眼鏡をかけた40代前後の男
🕵️ 探偵として読み解く:不可解な点と犯人像
● 計画性に欠けた身代金要求
金額設定は雑、金融機関の休みすら知らず、受け渡しの具体指示もなし。社会性の乏しい人物の可能性。
● 殺害後も電話を続けた異常性
「支配」や「操作」を目的としたサディスティックな性質を持つ可能性。
● 「おまわりさんと一緒」の真意
誘導された言葉か、もしくは身近に警察関係者がいたのか。捜査の盲点が内在していた可能性。
● 捜査の不備
なぜ最長通話時に逆探知を中止したのか?その指示の出所は?
現代でも最大級の捜査ミスのひとつと指摘されている。
■ 現在の状況
2002年に時効成立。犯人は逮捕・起訴されておらず、公訴権は消滅。
戦後の身代金目的誘拐殺人で唯一未解決となった事件です。