不貞慰謝料請求では、訴えられた側は不貞行為があった事を否定してくることが往々にしてあります。
その際に最も大事になってくるのが、動かぬ証拠ということになります。
そこで、探偵社によって撮られた証拠写真などが裁判で重要になってきます。
その中でも様々なケースがあるのですが、ビジネスホテルやシティホテルに宿泊した場合は、同じ部屋に泊まった訳では無いという主張がなされる場合があります。
同じ部屋に2人が入って行くところが撮れれば良いのですが、昨今はセキュリティの問題もあり、そこまでは立ち入れない場合が多くあります。その場合、同じ部屋であった事を証明するのは難しいのですが、平成19年の東京地方裁判所の出した判決では以下のように、別室に泊まったという主張を認めず、不貞の存在を推認した判断が出ています。
東京地方裁判所平成19年5月31日の事案
探偵社の調査によりA夫と浮気相手C子が同じホテルから一緒に出てきた事を指摘されたC子が「一緒に出てきたのは偶然であり、別々の部屋に宿泊した」と弁解したが、裁判長は以下のように判事し、C子側の主張を認めなかった。
C子側は、平成17年12月21日に○○ホテルに宿泊したが、その際はA夫が泊まったという231号室とは別の234号室に1人で宿泊したものであり、チェックアウトの時に、フロントでA夫と偶然会ったものである旨を供述し、○○ホテルから発行を受けたという宿泊証明書(平成17年12月21日にC子が○○ホテルの234号室に宿泊した旨が記載されている)を提出している。しかしながら、C子とA夫が、同一のホテルに同日、別々の部屋に偶然宿泊し、かつ、翌日の午後2時過ぎ頃にたまたま出会ったというのはあまりにも不自然であると言わざるを得ない。そして、宿泊証明書は、その体裁や、上部に記載された○○ホテルの郵便番号がC子の住所地のものであり、○○ホテルの郵便番号と異なっていることに照らして、作成経緯に疑問がある。
「不貞慰謝料請求の実務 主張・立証編」 中里 和伸・野口 英一郎 著
同じホテルに同じ日に偶然宿泊し、翌日同じ時間にチェックアウトするという行為があまりにも不自然である、という判断が下りた事になり、探偵社によるホテルへの2人の出入りの証拠で、不貞行為の存在が認められたということになります。
不貞行為の存在を主張するには、証拠が必要になりますので、お困りの場合はご相談ください。